金市場ニュース

異なる通貨における金価格

金は金融危機(2007年~2011年)の時のみに役立つのではありません。

ブリオンボールトリサーチ主任のエィドリアン・アッシュが、ここで異なる通貨における金価格の動きを分析し、金資産を保有する意味を問いかけています。

下記のそれぞれの通貨における金価格を通貨価値の物差しとして見てみてください。そして、他の主要通貨と比較をしてみてください。使っている自国通貨が、他の通貨と比べて価値を高めれいるか、あるいは失っているかが分かりることでしょう。

この表は、ブリオンボールトの金価格チャートで提供されている、7つの通貨建て金価格を比較しています。

2013年に米国ドルは強含み、金価格を夏と年末に押し下げました。そして、ユーロとスイスフランクと英国ポンドも通貨価値を高め、2013年末に金価格を押し下げ、昨年の記録的な下落時からの回復率も他通貨に比べ強くはありません。

これには理由があります。金が下げれば下げるほど、そこから回復するのは困難であるためです。

しかし、最も通貨価値を失ったのは、コモディティ通貨とも言われている豪ドルと加ドルであり、次に日本円となります。昨年のコモディティ市場の低迷は、豪ドルと加ドルを昨年後半に強く叩きのめしました。そのために、これらの通貨建て金価格は、年末にドル建てが更なる下げを見せた際に、最低値を更新することはなかったのです。

この間日本円は、物価目標を2%ととした日銀による異次元の量的緩和で、意図的にその価値が下げられました。そのために、日本の消費者にとっての金価格は2013年の下げから63%回復しています。

通貨価値を下げたにもかかわらず、日本の経済は未だ回復していません。約15年間の量的緩和を経て、日経平均株価指数(日経225)は11%下落しています。それに対し、円建て金価格は5倍近くへと上昇しています。

それでは、保有通貨のみで金を購入するのではなく、利益を出すために、異なる通貨の金価格を為替取引を行いながら追い続ける必要があるのでしょうか。

そう考える人々もいます。例えば、デニス・ガートマン氏のように。それに加え、多くのヘッジファンドは、2010年春にユーロ建て価格が急騰している際にそのような投資を行いました。しかし、多くの人が利益確定の売却をし、ドル建て価格が再び急騰し始めた際に損失を出すこととなったのです。

金が最も力を発揮するのは、様々な危機の中で資産を保護するというシナリオの中でとなります。それは、この資産が行うべき十分な役割であり、他国の人々が経済危機やインフレで資産価値を失っている際に利益を得ることなどは、あまり考えるべきではないでしょう。

エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチ主任として、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

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