金市場ニュース

なぜ人々は金を買うのか

今年6月にインフレ率が金利よりも早いペースで上昇しています。この状況はどうやら長期にわたることになるかもしれません。

そのような中、ブリオンボールトが先週顧客に行なった金投資に関するアンケートの結果が明らかとなりました。

なぜ人々は金や銀を買うのでしょうか。ここで、ブリオンボールトのエィドリアン・アッシュが、このアンケート結果を分析し解説しています。

ブリオンボールトが行なったアンケート結果では、その答えははっきりとしたものでした。それは、インフレーション、言い換えれば通貨の購買力の低下から資産を守るためというものです。

もちろん、分散投資目的で金を買うのは良いことでしょう。しかし、現在金を保有する人々へのアンケートでは、50%の人々が、「ポートフォリオの多様化」よりも、「通貨の代替」をその理由として挙げているのです。そして、先週アンケートに答えた300人の人々の金へ投資する目的は、銀行から資産を引き上げるためというものでした。

近年英国のインフレ率の高さからも、通貨の価値低下を憂う人々による、通貨として資産を保有することを避ける傾向は明らかなものです。それが、金を購入すること、もしくは他の有形資産を購入することであっても。政府が発表している消費者物価指数は、前年度比今年6月は2.9%の増加となっています。これは、予想されていた3.0%を下回ったものの、前月の2.7%を上回るものでした。

それに対し、英国の政策金利は0.5%で長期間据え置かれています。そのため、貯蓄をしている一般市民は、信用バブルの付けを払わざるを得ないのです。それは、困窮した銀行を救済し、政府の財政赤字を補うために、通貨資産の価値低下を受任せざるを得ないということです。

歴史上、この状況は長期間にわたることが多いようです。大恐慌以降は、政策金利は2%に20年近く据え置かれたのでした。

2013年9月は、消費者物価指数が金利を上回り、貯蓄がその価値を毎月失うようになって5年目となります。これは、もし金融危機以来1000ポンドを預金していた場合、その実際の価値は現在903ポンドとなることを意味します。もし、同時期に1000ポンド分の金を購入していた場合は、現在その購買力は1494ポンドとなります。

もちろん、金価格は2011年にピークを迎え下落しています。そのため、このピーク時の2011年8月末においては、1000ポンドの金投資は、2223ポンドとなっていたのです。これは、3年間で実質価値が122%増加したことということになります。

先からも、銀行に貯蓄をしていた人々が実質的に損失を被ったことは明らかです。米国の貯蓄者もこの点は注目すべきかもしれません。バーナンキFRB議長が、緩和縮小の可能性を明言した6月に実質金利は多少ですが下げているのです。それは、インフレ率が金利の上昇よりも早いペースで上げているためです。

この現状が継続する可能性を考慮する必要があるかもしれません。

実質金利は、金投資で利益を出すために、金購入と売却時を促すベルを鳴らしてはくれません。2011年9月の金価格のピークが実質金利の大きな下げと重なっていること見ると、このような動きをすることを事前に分かっていればと思うことでしょう。

しかし、実質金利の低下は必ずしも金価格の上昇を引き起こすものでもありません。1971年からの統計上では、実質金利が低下時に金価格がインフレ率よりも速いペースで上昇したのは55%というものでした。

しかし、実質金利動きは、金価格動向に重要な要因です。それは、銀行預金がインフレ率を超える利益をもたらすのであれば、金投資の緊急性は失われるためです。1971年以降、米10年債の利回りが前月比上げた月の金価格の平均上昇率は、インフレを考慮した場合0.1%です。しかし、利回りが前月比下げた月の金価格の上昇率は、、実質平均1.6%となっています。

これを言い換えると、この傾向に反して取引をすると、金投資のより良い機会を見逃すことになるということです。そして、長期の貯蓄をしている人々が、預金や国債で購買力を高めることを望む場合、その金利や利回りがインフレ率を上回っていなければ、意味を成さないことは十分に理解できることでしょう。

このようなことから、近年人々は金を買っているのです。

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資産保護のために金の購入をお考えですか。ワールドゴールドカウンシルが資本参加をし、一般投資家へそのサービスを推薦している、オンライン金取引において世界一の実績を持つブリオンボールトでは、日本のお客様に資産の地政学的分散投資を可能とするスイス、英国、米国、シンガポールでの金保管サービスを提供しています。

エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチ主任として、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

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