ゴールドマーケット2011年から2012年へ - 5 January 2012

スタンダードバンク東京支店長池水雄一氏が、「池水雄一のゴールドディーリングのすべて2」で、2011年の金市場を振り返り、2012年の市場を予想しています。

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皆様、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

2011年はまさに前代未聞のマーケットでしたね。どういった点で前代未聞だったのか。以下2011年、ゴールドマーケットでの注目点です。

「2011年ゴールドマーケットの記録」

・9月9日に史上最高値1921ドルを記録。これが年末なら約35%の年初来上昇率になったはず。もちろん1980年以来の記録でした。しかし年末では約11%の上昇に終わりました。ちなみに年間最大の上昇率を記録したのは2007年の31%。その次は一昨年2010年の29.5%。こう考えると35%上昇というのはそれほど異常なことではなかったかもしれません。
・G7(先進国)すべての通貨で9月に過去最高値を記録。
・12月14日に200日移動平均線を下回る。2009年1月以来、ずっとこの線を上回ってきた。これをトレンドの転換と見る投資家も多い。

・リースレート(ゴールドの金利)がマイナス金利となり、11月末には史上最低レベルに。ドル資金調達のために欧州の中央銀行を中心にゴールドの貸し出しを活発化?
・9月26日、史上最大の一日での下落(130ドル)を記録。
・Gold ETFの残高が2400トン近くと過去最高の残高に。
・ソロスファンドがQ1にGold ETFを売ったこと。
・Gold ETF最大の所有者であるポールソンファンドがQ3にその36%を売ったこと。
・トラジファンドがQ1にすべてを売り、Q3に26%買い戻したこと。
・イートンファンドがQ3にGold ETFをすべてを売ったこと。
・Q3に中央銀行が買ったゴールドは40年来の記録。発表しているところで目立ったのは韓国とメキシコ。韓国は25トン、メキシコは3月に70トン以上購入。これはインドが2009年にIMFから200トンを買った以来の一時での購入量。」合計93トンの持ち高に。
・タイが53トン、ロシアが59トン購入。
・その他、ボリビア、カザフスタン、コロンビア、タジキスタン、トルコがゴールドを購入。
・中国は中央銀行のゴールドの統計は公式に発表しないが、香港のゴールド輸入量は過去にないほどの量に。
・インドの需要はインドルピーの動きの影響が大きく、2011年のインドルピー安は、インドの需要に大きなブレーキをかけた。
・ベネズエラが英国及びスイスに保持した自国のゴールドを輸入。
・5月にComex史上二位の一日当たりの出来高(330,000ロット)を記録。ちなみに最高記録は2009年12月4日。しかし2011年の特徴は建玉に対する出来高の割合が急増したこと。建玉は減少傾向にあるのに出来高が増えるつまり日計り商い(day trade)が増えている。8月にはその割合が93%になった日も。
・9月26日CMEがゴールドの証拠金を11475ドルまで上げる。(史上最高値)これにより一日の史上最大の下げ130ドルを記録。

「2011年の商品のパフォーマンス」

年初から年末までの各商品の騰落率です。最後失速したとは言え、ゴールドは10.3%上昇、一方シルバーは-10%、パラジウムは-18.4%、プラチナは-21.1%と昨年好調だった工業用メタルは大きく下げました。やはり世界景気の減退の影響は大きいようです。

「2012年はどうなるのか?」

2011年後半は本来ならば買われるはずのゴールドまで売られたまさに不安が先行したマーケットでした。ヨーロッパ情勢がやはり2012年も最大のマー ケットの関心事にあることはおそらく変わらないでしょう。問題は2011年後半とにかくリスクアセットのすべてを売ってでもまずキャッシュを持っておきたいという投資家の不安心理がどのように変化していくか、でしょう。投資マネーの動き、これが最大の鍵を握ると思います。コメックスの投資家ロングポジショ ンはほぼ3年ぶりの低水準にあります。一方、アジアを中心とする実需の買いは旺盛、またGold ETFの残高は史上最高レベルにあり、新興国の中央銀行はそのゴールド買いの姿勢を強めています。Comexの投資家ロングポジションがこれくらいのレベ ルであった3年前のゴールド価格は900ドルでした。それに比して現在は1600ドル近くにあるということを考えると、先物以外の分野での長期的投資家の買いは健在であると思われます。旺盛な実需と中央銀行の存在で下値は支えられるのではないでしょうか。そして一旦投資家心理が改善するとおそらく売られて いるすべてのアセットの中で、一番に買われるのはゴールドであると思います。このところ株とともにリスクアセットとして動いていますが、この状況いつまで も続くわけではないでしょう。FRBを始めとして各国中央銀行の金融緩和政策は変わらず、世界中の流動性は増えており、これがゴールドの上昇の最大の要因になっていることは今年も変わらないはずです。(ただ昨年末から、欧州危機による資金出し渋りのために、ドル資金がうまくマーケットに回らなくなったとい う状況があり、それがドルへの資金集中により拍車をかけ、引いてはゴールド売りにもつながりました)

ゴールドの発行体のリスクがないというほかの金融資産にはない特性が本来であれば最も評価されるべき状況にあるはずです。このままゴールドは株や債券などと同じようなリスクアセットなってしまうことはないはずです。そう考えるとやはり長期的視野にたち、その特性をもっともうまく利用すること、つまりポートフォリオの一部としてほかの金融資産のリスクの分散としてゴールドも保有するというのが最も堅実な投資姿勢だと思います。

言わずもがなですが、相場予想なんて誰にもわかりません。それは素人であっても専門家であっても人間である以上同じです。未来を見通せる人間などいない のだから。そうすれば当たる保証などない予想に頼って短期的勝負をするよりは、どっしり構えて買ったら忘れるくらいのスタンスがゴールド投資にはもっとも向いているのでしょう。僕はそう思います。 皆さんにとって2012年がよい年になりますように。ゴールドに投資することによって、世界の動きがいっそうみじかに感じられるようになればそれは非常に大きな収穫ではないでしょうか。

以上

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池水雄一, 05 Jan '12

貴金属ディーリングの世界でも第一人者である池水氏は、上智大学を卒業後、住友商事、クレディ・スイス、三井物産、スタンダードバンクと貴金属ディーリングに一貫して従事し、現在はスタンダードバンク東京支店長。Oval Next Corp.サイトで市場分析ブルース(池水氏のディーラー名)レポートも掲載。