ゴールド新時代に突入か! - 22 August 2011

スタンダードバンク東京支店長の池水雄一氏が、史上最高値を更新し続ける金価格の背景を「池水雄一のゴールドディーリングのすべて2」で解説しています。

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先週はお盆休みをいただきました。皆さんよいお盆だったでしょうか。今年のゴールデンウィークに続き、このお盆のお休みも相場が大きく動きました。例年であれば夏枯れの季節なのですが、今年は事情が違うようです。今週は様相が変わったゴールドマーケットを考えてみたいと思います

先々週末、史上初めてのS&Pによる米国国債の格下げは、マーケットに激震を与えました。NYダウが四日連続で400ドル以上の乱高下が続いたのはダウが始まって以来の出来事でした。ゴールドも1660ドルから一挙に1810ドルまで上昇、一週間の引けは1750ドルという歴史にあまり例をみない大きな動きとなった一週間でした。すべてが初めてづくし、この週末で世界が変わったのではないかと思えるほどです。

Vix(Volatility Index;SP500の株価オプションのボラティリティを指数化したもの。CBOEに上場されています。)、いわゆる恐怖指数も一時リーマンショック以来の40台まで急騰しました。(下表)そしてそれがNHKの朝のニュースで紹介されるほど切迫した状況になっています。

ここまでの動きを少し整理をして考えてみましょう。今回の世界の経済に対する不安のそもそもの発端になったのは、ヨーロッパ諸国の財務問題です。アイルランドから始まり、ギリシャ、スペイン、ポルトガル、イタリアそして最近ではベルギーやフランスまで遡上にのぼるほどユーロ加盟各国の財政状態は思わしくありません。もはや最後の砦はドイツだけといった状態です。経済規模、政治体制が全く異なりそれぞれが主権を持った国々を同じ通貨で、経済だけを共通して運営していくことの難しさがここに噴出していると言えるでしょう。本来ならばその国の経済力によってそれぞれの通貨の強弱が生まれ、そこで調整されていく部分ですが、弱い国の債務が強い国によって賄われていくという地域共同体の理想はやはり夢だったのかもしれません。一国の経済破綻がユーロ圏全域に深刻な影響を及ぼし、それが次々と他の国の問題を助長していくように拡大しています。ユーロの今後を考えると非常に厳しいものがあるでしょう。

そしてまさにこのタイミングで欧州の問題を忘れてしまうほどの激震が米国から起こります。国債の債務上限引き上げの問題です。8月2日を期限としたこの問題はぎりぎりまで政府と議会との合意が達成できず、まさかの米国債債務不履行の可能性まで示唆されるまでに緊迫した状態になりました。まさにその8月2日に議会との合意に達して、債務不履行という最悪のケースは免れましたが、これが後日の米国債格下げの直接の引き金になったことは否めません。この合意は単なる問題の引き延ばしであって、債務自体を減らすための決定的な方策は打ち出されていないからです。このまま行くと米国の債務は2013年にもGDPの100%に達すると見られています。米国の債務の増加を追うようにゴールドの価格は上昇していることが一目瞭然です。(下表)

もはやFRBにとってできることはいっそうの金融緩和を続けることしかないのが現状です。前回のFOMCでは少なくとも2013年半ばまでの低金利の維持がバーナンキ議長によって発表され、世界の金融緩和モードはこの先少なくとも一年間は続くことが決定的になりました。

ゴールドにとっては、以下の点で独歩高が保証されたような形になっています。
・ドルとユーロに対する投資家の不信
・政策当局による今後も続くマネーの過剰流動性
・1800ドルをつけたことにより1700ドル台でのアジア実需の見切り買い出動

以上二点のマクロ経済状況からのまさにthe last havenとしてのゴールドへの資金流入は続くでしょう。両方とも決して一時的な出来事で短期的に解決できるものではないことを考えるとゴールドからそんなに簡単に本格的に資金が逃げ出すことは考えづらい状況です。ゴールドの変動率(ボラティリティ)は先週一時15%から30%近くに急騰(今週は24%近くまで下がっています。)、一日の値動きも50ドル以上という日が珍しくない状況になっています。まさに米国債格下げ以来、マーケットは違った時代に入ってしまったと言ってもよいと思います。また三点目の実需の見切り買いも驚きでした。1600ドルはまったく買いに動かず1500ドル台への調整を待っていた実需でしたが、とうとう1800ドルをつけるにいたって、そこから下落した1700ドル台は積極的に買い出動するようになっています。実需が投資マネーに押し切られる非常に稀なケースです。

短期的な投機資金の動きで激しい上下動を繰り返しながらも、基本的にはゴールドに流入してくる資金は増加し続けるでしょう。そのマーケット規模を考えたとき、ゴールドの価格はさらに上昇せざるを得ない状況にあると思います。もはや2000ドルと言っても誰も驚かないそんなマーケットになってしまいました。この高値がさまざまな影響をゴールド業界にも与えていくでしょう。それがどういうものになるのか、今後注目していきたいと思います。

以上

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池水雄一, 22 Aug '11
池水雄一さんのユーザアバター

貴金属ディーリングの世界でも第一人者である池水氏は、上智大学を卒業後、住友商事、クレディ・スイス、三井物産、スタンダードバンクと貴金属ディーリングに一貫して従事し、現在はスタンダードバンク東京支店長。Oval Next Corp.サイトで市場分析ブルース(池水氏のディーラー名)レポートも掲載。