ドットフランク法の現状 - 27 October 2011

スタンダードバンク東京支店長の池水雄一氏が、「池水雄一のゴールドディーリングのすべて2」で、今後の金融取引に大きな影響を与える可能性のあるドットフランク法について解説しています。なお、このレポートは、当初10月18日にポジション・リミット案が可決される以前に準備されたものですが、ポジション・リミット案可決後の26日に、結果を踏まえ追加更新されました。

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今週は少し堅く短いですが、ドットフランク法の現状をみてみましょう。

この法律の実際の運用の要旨は今後決めていかれるものです。10/18日火曜日にCFTCで公開ミーティングが行われ委員の投票が予定されています。こ のミーティングの肝は、ドットフランク法で提案された二つの最終的規則(ポジションリミットと派生商品のクリアリング)と一つの修正(スワップの規則)で す。

・ポジションの相殺に関して(ポジションリミット)

ポジションリミットは、期近のみならずその先のコントラクトにも及ぶ。そのためインデックスファンドやヘッジファンドそして銀行など、消費者、最終ユー ザー、そして生産者に流動性を与える「すべての『悪者?』投機家」がその対象になることに。そもそもこのルールはスワップや先物そしてOTCをネットする ものではなかったが、現在はこの市場間のポジションをネットで考える方向になっている。つまり先物のポジションとスワップを相殺することができる。たとえ ばOTCのスワップロングポジションを先物のショートポジションと相殺することができるのである。(もちろん、これらのポジションがほぼ1対1でヘッジさ れている必要があるが。)ポジションリミットの例外規定を得るためには、現物市場でのポジションをヘッジしているという証明が必要である。(まさにヘッジ 玉申請ということだ。)そもそも、市場別にリミットが設定される予定であったのが、金融業界からの強い反対により、ヘッジはセットして考えられるようにな るようだ。

・口座の統合(クリアリング)

もしファンドが何人かの別々の運用者を使っている場合は、それぞれの運用者に対してリミットが作られるのか、もしくはもしくはファンド全体に関してリ ミットが作られるのか。この問題に関しては、その運用者が独立口座運用者としての例外規定が設けられ、ファンド全体に対するリミットではないであろう。し かし、もし、運用者たちが一つの同じ戦略(たとえば商品指数を追うといった)を共有している場合は、例外的にこれらに対して一つのリミットとなる可能性が ある。

・ヘッジ取引(スワップ規則)

委員会は銀行が投資家とスワップ取引をすることの原則自由を廃止し、ポジションリミット以上のポジションを取るためには、現物市場でのヘッジの裏づけと なるポジションを証明する必要がある。しかしその場合、たとえば7月に10月の収穫予定の穀物をヘッジするために先物を使う場合はどうすればよいのか。 CFTCはこれに関しては、収穫予想ヘッジとして認める方針であるが、それでもトレーダーは収穫を保存する予定の倉庫を確保しているということを証明する 必要がある。

・条件付リミット

最後にもっとも議論がわかれるところなのが「条件付リミット」である。デリバリー月のポジションリミットはその商品のデリバリー可能数量の25%にする というものだ。一方、同様の先物でただし現金決済のみというというものであれば、ポジションリミットはその5倍にするというものだ。この案にはCMEなど 既存の先物取引所が強く反対している。現金決済の先物コントラクトは、彼らのコントラクトに対する寄生虫のようなものだとまで言っている。この問題はどう なるかはわからないが、しばらくは仮ルールとして後日CFTCによって再び検討されることになりそうである。

ポジションリミットに関する投票の行方
(yes は賛成、noは反対、Unconfirmed はどちらかわからない)

Chairman: Gary Gensler( Democrat) :Yes
Commissioner: Bart Chilton(D):: Yes
Jim Sommers (Republican) : No
Michael Dunn (D):Unconfirmed
Scott O’Malia (R):Unconfirmed


投票の行方は最後の二人にかかりそうである。ただしこのMichael DunnはDemocratであるのでyesが期待されているが、引退前であり、また以前、このポジションリミットに関して「かかっていない病気に対する 処方箋だ。」と述べたことがあり、予断を許さない。

果たしてポジションリミット案がどうなるのか、今後のマーケットの流れにも影響を及ぼす事項であるだけに注目して結果を待ちたい

ポジションリミットに関する投票結果(2011年10月26日更新)

さて、ポジションリミットに関する投票が終わりました。結果は3対2でこの新しいポジションリミットは可決されました。しかしこれは言わばみんなが不満という結果。銀行をもっと取り締まれというWall Streetでデモをやっている連中にとっては、ポジションリミットは抜け穴だらけに見え、銀行家は、この規制によりマーケットの流動性が損なわれること を恐れる(結果的に彼らの利益も減る。)。実際、誰も満足していないのが現状。またまだまだはっきりとしていない事項が多いのも事実。たとえば「現物デリ バリー可能供給量」を決めるのはCFTCであるが、それがどうやって決められるのか。現状ではCFTCはこれを2年毎に更新するということになっている。

この新たなOTCに対するポジションリミットは、CFTCがスワップを法律的に定義するもう一つの規則を採決した後60日後に適用される予定である(それがいつかははっきりと述べられていない)。そしてその後もすべての商品スワップマーケットのサイズに関するデータを一年分積み重ねるまでは、すべてのス ワップがその対象となることもないとのことで、おそらくそうなるのは早くても2012年後半になろうというのがあるCFTCメンバーの意見である。

以上

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池水雄一, 27 Oct '11
池水雄一さんのユーザアバター

貴金属ディーリングの世界でも第一人者である池水氏は、上智大学を卒業後、住友商事、クレディ・スイス、三井物産、スタンダードバンクと貴金属ディーリングに一貫して従事し、現在はスタンダードバンク東京支店長。Oval Next Corp.サイトで市場分析ブルース(池水氏のディーラー名)レポートも掲載。