金市場ニュース

ドルと金が反対の値動きをしてきた背景

初心者にも分りやすい金のブログとして、ワールドゴールドカウンシル日韓地域代表豊島逸夫氏にも推薦されている、「はじめての金読本」で、先週の「金価格上昇の背景にあるドル離れ」で触れた「ドルと金の逆相関」について解説しています。

ちょっとタイムマシンに乗って、歴史をさかのぼります。1944年7月、米国ニューハンプシャー州ブレトン・ウッズ。そのリゾート地に建つマウント・ワシントン・ホテルで、第二次大戦後の国際通貨金融体制が協議されました。そこで国際通貨基金国際復興開発銀行の設立が決まり、ドルを中心とした固定相場=金ドル本位制が制定されました。基軸通貨の椅子をめぐる英国と米国との応酬の末、ポンドからドルへ、通貨の政権が交代した歴史の転換点です。連合国側で唯一、国土が戦場とならず、社会経済インフラが盤石だったことも米国に幸いしただろうと思われます。

さて、その際に決定した金ドル本位制についてお話しすると、まず、金と直接リンクするのは米国のドルだけに限定、他通貨はドルに対して為替を固定(誘導)するというもの。金1オンス=35ドル、円は1ドル=360円という具合です。これが何を意味するかといえば、米国が各国政府に対して、「金1オンス」と「35ドル」の交換にはいつでも応じますよ、という約束を交わし、その見返りとして、米国は、基軸通貨としてドルの信認を獲得したということになります。

しかし、この「金ドル本位制」は、1971年8月15日、米国ニクソン大統領による「ドルと金とのリンクを放棄する」という一方的な電撃声明とともに突然、終焉します。ベトナム戦争への長期介入で米国経済が疲弊、貴重な金準備が激減したことなどが理由だったされます。その結果ドルは金の裏付けを持たないペーパーマネーとなり、一方の金は、通貨価値の指標としての役割を解かれ、その価格もマーケットが決定するところになりました。国際為替相場は固定相場制から変動相場制に移行しました。

かくして金とドルとは無関係の存在になったわけですが、こうした歴史的背景があることから、金ドル本位制が終焉した現在もなお、ドルは基軸通貨の地位をかたく守り続け、金は「ドルの代替通貨」という位置づけとなっているのです。2000年以降、この点が注目されるようになってきたのは、911テロ、イラク介入の長期化、サブプライム破綻と経るにしたがって「ドルの価値の揺らぎ」が顕在化し、それに呼応するように金価格が上昇を続けているためです。

ただし、1999年1月に誕生して以来、米国ドルの対抗馬とも、次の基軸通貨とも目されて来た欧州統一通貨ユーロが、いまでは域内の経済・財政不安、債券不安に覆われています。ドルも不安、しかし一方のユーロも不安ということで、いまではドル安=金高、ドル高=金安という方程式が崩れ、通貨不安=金への逃避、という流れになりつつあります。

また、「金市場のトレンドを読む」でも紹介しましたが、今週になって、欧州議会経済通貨委員会において、金を融資の担保として受け入れることが承認されたとのこと。ドル、ユーロから金へという流れが加速するかも知れません。少なくとも金はますます売られにくくなるでしょう。

最後に。今回紹介したブレトン・ウッズ会議については、谷口智彦氏の「通貨燃ゆ」に詳しく書かれています。通貨というものがいかに政治的な存在であるか、この本を読むとよく感じられることと思います。

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経済アナリスト、そして金市場の第一人者の豊島逸夫氏にも推薦されている金のブログ「はじめての金読本」より。

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