ドル金利は金のライバルなのか - 21 January 2011

初心者にも分りやすい金のブログとして、ワールドゴールドカウンシル日韓地域代表豊島逸夫氏にも推薦されている、「はじめての金読本」において、ドル金利と金価格の関係が解説されています。

金価格は2001年春から上昇トレンドに移行し、上がったり下がったりしながら底値を切り上げており、その勢いはいまだに衰えることがありません。

流れに乗り遅れないように買い始めている向きもあれば、そろそろ天井だろうと売却に動いている向きもあります。相場観というものは人それぞれですし、金読本がとやかく言うつもりも毛頭ありませんが、ひとつだけ、忘れないでいただきたいことがあります。

金は本来、儲けを追求するためのツールではなく、万一のためのヘッジ資産=保険だということです。なにごとによらず基本を忘れ、欲に駆られてあたふた動くとロクなことはないものと相場は決まっています。

さて、長期的に価格が上昇している金ですが、じつは大敵ともライバルとも目されている存在があります。それがなにかと言えば、「金利」です。そのなかでも基軸通貨ドルの金利(FF金利)動向は、金価格を動かす大きな要因の一つとされています。これから先は事情が変わってくるかも知れませんが、少なくとも過去においては大きな影響を及ぼしてきました。

その典型的な例を1974年から1980年代前半の金価格とドル金利(FF金利)の推移に見て取ることができます。半年ごとのデータを追ってみると以下の通りです。

年月      ドル建て金価格  FF金利

1974年1月  129.12ドル    9.65%

1974年7月  142.63ドル    12.92%

1975年1月  176.57ドル    7.13%

1975年7月  165.03ドル    6.10%

1976年1月  131.59ドル    4.87%

1976年7月  117.81ドル    5.31%

1977年1月  132.29ドル    4.61%

1977年7月  143.39ドル    5.42%

1978年1月  173.20ドル    6.70%

1978年7月  188.65ドル    7.81%

1979年1月  227.13ドル    10.07%

1979年7月  294.87ドル    10.47%

1980年1月  675.04ドル    13.82%

1980年7月  645.04ドル    9.03%

1981年1月  557.60ドル    19.08%

1981年7月  409.28ドル    19.04%

1982年1月  384.14ドル    13.22%

1982年7月  338.43ドル    12.59%

1983年1月  481.56ドル    8.68%

1983年7月  422.69ドル    9.37%

1984年1月  370.81ドル    9.56%

1984年7月  347.54ドル    11.23%

 

1970年代にあって、世界経済はエネルギー源を石油や天然ガスといった地下資源に負うところがおおく、その価格上昇は世界経済を直撃しかねない環境にありました。また当時は米ソが政治的・軍事的に対立する緊張下にあり、大きなリスク要因として意識されていたはずです。中東湾岸産油国がその状況を利用しないはずはありません。

そして実際、1973年に第一次石油ショックが発生。1978年には第二次石油ショックに発展。そこに当時のソ連によるアフガニスタン侵攻が重なり、急激なインフレと有事を背景に金価格も沸騰することに。そこでインフレを抑えるべく米国のFF金利も上昇し、1981年には19%という高水準に到達しています。その後1980年代半ばにインフレが抑制されて金価格も落ち着きを取り戻しています。

「原油と金の価格連動」とか、「有事の金」とか、あるいは「インフレに強い金」といったキーワードは、こうした歴史を背景に生まれたことも知っておいてください。

それにしても、インフレが激しく進むと、この水準まで金利が上昇することがあるということは、アタマに入れておいた方が良いかも知れません。

では、現在はどうなのかと見れば、2010年12月現在、金価格は1390ドルの水準にある一方、FF金利は0.18%という歴史的な超低水準にあります。しかも、米国の現在の雇用状況を見るにつけ、FF金利が金価格に大きな影響を与える水準に到達するには、相当の時間を要するだろうと言わざるを得ません。

ただ冒頭で「事情が変わってくるかも」とお話ししましたが、近年、欧米先進国の経済地盤は相対的に沈下しつつあります。一方、ブラジルロシアインド中国といった新興国、そして資源国は着実に台頭しつつあります。好調な経済を背景に進行するインフレを抑制すべく、新興国の政策金利は明らかな上昇傾向に移行してもいます。

世界の金融課題・経済課題を話し合う国際会議も、これまでのG7、G8から、G20へと拡大してきています。新興国、資源国が台頭するにしたがって、世界経済の重心は、西から東へ、北から南へと移動しつつありますから、旧来の先進諸国による合意形成だけで、世界がバランスするとは考えにくい時代に入っています。その意味で、しばらく混沌の時代が続きそうです。

こうしたこともあり、米国FF金利が金価格に及ぼす影響は、相対的にゆっくり低下していくことになるかも知れません。新興国の金利動向も重要な指標になってくるでしょうから、それぶんだけ、金価格の変動要因は、より複雑になっていくだろうということもできそうです。

金はあくまでも長期のヘッジ資産だということをお忘れなく。

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経済アナリスト、そして金市場の第一人者の豊島逸夫氏にも推薦されている金のブログ「はじめての金読本」より。