パラジウム市場の見通し(2) - 18 November 2010

先週お届けした、スタンダードバンク東京支店長池水雄一氏のパラジウム市場の見通し(1)の後編をお届けします。

***********************

先週からの続きです。

「スイスの輸出入統計の示すもの」

10月末に発表された9月のスイスの輸出入統計によればプラチナの需要はぱっとしないものであったが、パラジウムの需要はより強いものであった。また年初来続いていたのPGMのチューリッヒからロンドンへの移動がようやく終わり、9月にはそれが止まったようである。

プラチナ

・9月、スイスは5万2875オンスの輸入であった。これは8月に続いて二ヶ月連続のネット輸入となった。(8月は7万オンス)年初から今まではだいたい月間10万オンスの輸出であったのを考えるとこれは世界各地でのプラチナの需要が冷え込んでいることを表していると考えれる。ただし、大きな部分がロンドンへの移動であるのでこれを考慮する必要があるが。

・中国のスイスからのプラチナの輸入も精細を欠いている。9月は2万オンスだけ。2009年年初から中国は平均で月7万オンスをスイスから輸入してきている。最大の要因は価格高騰による宝飾需要の減少。ただしこれは一時的な減少で年末にかけてまた中国の輸入は増加すると考える。

・中国以外で目立った大きな輸入国はなし。カナダが1万4千オンス、イタリアが5700オンス輸入している。

・従来は産業需要で大きな消費地である米国やドイツは、スイスからの輸入ではなく、逆にスイスに向けて輸出している。米国4万6600オンス、ドイツ1万2600オンス。

パラジウム

・9月は2万1927オンスのスイスからの輸出。これは五ヶ月連続のスイスからの出超。年初からは一月あたり9万5千オンスのパラジウムがスイスから輸出されている(これもまたロンドンへの移送を含んでいるのでその分は割り引いて考える必要があるが)。

・中国の需要は若干スローダウン。7月は4万2千オンスの輸入だったのが、8月には1万5千オンス、9月は4600オンスとなった。

・ロシアからのスイス向けの輸出がほとんどない状態が続いている。9月は2400オンスだけであった。年初来の数字は一月あたり平均4万7400オンス。もちろんロシアからのパラジウムの大部分はスイスには行かずに直接実需家に行くのが実情であるが。パラジウム生産者であるノリリスク社はほとんど在庫がなく、生産するメタルをすべてそのまま輸出にまわしているようである。ロシアの国としての備蓄は700万オンスと思われる。

「2011年第一四半期まで高値が維持される要因」

第一に12月に期待される自動車販売の増加は最低でも2011年3月までは維持され、それがPGM相場のサポートになりそう。

米国、中国、日本そしてヨーロッパでの自動車販売をみてみる。これらの国と地域は自動車触媒におけるPGMの最大の消費地域であり、世界の自動車販売の50%を占める。季節的には12月、2月そして3月は自動車販売が伸びる月であり、このパターンは2009年の経済危機時でも変わらなかった。自動車メーカーの何社かは、この時期を前にして在庫の積み増しに動く可能性がある。特に中国では更なる販売の増加が見込まれる。中国はガソリン車市場であるので、これは特にパラジウムにとっては強材料。

好調な自動車販売は投資家たちのPGMに対する興味を後押しするものでもある。すでにETFにおいては、力強いリバウンドが来ている。プラチナETFは10月月初の97万1千オンスから一ヶ月で101万4千オンスへ増加、パラジウムは168万3千オンスから183万8千オンスに増えている。

第二に12月と1月にはプラチナ宝飾の需要が伸びると予想する。

2011年のプラチナ需要の30%はプラチナ宝飾が占めると予想(これは230万オンスに相当)。このうちに65%が中国の需要。歴史的に宝飾の需要は西洋社会のクリスマス前後と今年は2月初旬の中国旧正月時に一番盛り上がる。この宝飾需要と自動車販売の伸びがPGMの価格をサポートするであろう。

以上

***********************

貴金属への投資をお考えですか?オンライン金及び銀取引で世界一の実績を誇るBullionVaultをお試しください。

 

池水雄一, 18 Nov '10
池水雄一さんのユーザアバター

貴金属ディーリングの世界でも第一人者である池水氏は、上智大学を卒業後、住友商事、クレディ・スイス、三井物産、スタンダードバンクと貴金属ディーリングに一貫して従事し、現在はスタンダードバンク東京支店長。Oval Next Corp.サイトで市場分析ブルース(池水氏のディーラー名)レポートも掲載。