取引証拠金(マージン)と相場の動き - 16 June 2011
スタンダードバンク東京支店長の池水雄一氏が、5月に銀価格が急落した一つの要因である証拠金の引き上げと相場の関係を「池水雄一のゴールドディーリング2」で解説しています。
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今週は先物取引におけるマージン(証拠金)の話をしましょう。5/11日付けの「ゴールドディーリングのすべて2」で、ゴールデンウィーク中の相場急落の原因はCMEによるシルバーの証拠金引き上げだったと書きました。今週はマージンの引き上げが相場に与える影響と取引所の思惑を、シルバーの軌跡を中心にみながら書いてみたいと思います。

上の表はシルバーの価格とマージンの関係を表したものです。そもそもマージンとは取引所が抱えるリスクを減らして、過熱した相場を冷やす役割を果たすも のですが、最近はこのマージン自体が、相場の動きを引き起こしていると、多くの投資家が非難の声を上げています。特に最近のシルバー、ガソリン、綿花はこ のマージンの引き上げによって、売りの連鎖反応が引き起こされ、多くの投資家が抱えていたロングを投げざる終えない状況に追いこまれたのです。価格の変動 が激しくなったということでマージンを上げるとかえって火に油をそそぐ結果となったのでした。
4月25日から5月5日の間わずか8営業日の間に5回もマージンを上げ、6%から12%へと引き上げ21600ドルとしました。そしてその結果シルバー は25%も急落したのです。同時期にガソリンのマージンは48%上げました。その結果価格は15%も下落。2月には綿花の価格が1ポンド2ドル近くまで上 昇したことに対して、ICEが50%ものマージンの上げを実施。翌日に綿花の価格は5%急落しました。
これに対して取引所側は価格の変動率を注視しているのであって、価格の動く方向を注視しているわけではない、といいます。彼らはマージンを動かすにあ たってタイミングを重視し、前もって発表してマーケットがその変化を十分に吸収して、資金のアレンジをできるように気をつけているということを言っていま す。彼らの見方によれば、マージンを動かすことは相場においては比較的に「小さな」事象であり、相場動向にはもっとほかの事象の影響が大きいと考えていま す。しかし、このゴールデンウイークに実際に起きた上記のことを見ていると、マージンと相場動向の関係は決して小さな(marginal)なことではあり ません。明らかにマージンの動きが相場に大きな変化をもたらす原因になっています。
特に商品(コモディティ)のマーケットはマージンが与える影響は大きいものです。商品先物の最大の魅力はその「ボラティリティ(価格変動率)の高さ」と 「比較的低いマージン(証拠金)」にあります。つまりその商品代金の5%-8%のマージンで取引ができるということです。株式は20%ものマージンがかか ります。コモディティは圧倒的に資金効率がいい、いわゆるてこの原理(レバレッジ)が強く働く投資対象なのです。これが取引所にとってはいわゆるジレンマ となっています。なるべく低いマージンにして多くの投資家の取引を呼び込みたいと思う一方、参加者の破綻からの守りも必要であり、マージンはその防波堤の 役割も果たしており、非常に微妙なところです。高すぎると人が来ない、低すぎると逆に波に押し流される可能性があるのです。
そして、投資家にとって一番困った問題なのは、このマージンの上げ下げの決断のタイミングやプロセスがまったくわからないことです。今回のシルバーのよ うに8営業日に5回もマージンを上げるということが行われるのは前代未聞の出来事です。それ以前は3月に一度マージンを上げただけ。これから4月25日に 次のマージンをあげるまでの間にシルバー価格は30%上がりました。マージンを上げるならもっと早くに上げるべきではなかったかという批判が出ても当然で しょう。先物のブローカーの中には自主的にマージンを上げたところもあったほどです。
またその後の相場の急落の後も上げられたマージンがそのままになっている(マージン比率が10%を超えた状態のまま。)ことにも納得ができない投資家は多いはずです。
CMEには20人近くのリスク・マネジャーが、シカゴ、ニューヨーク、そしてロンドンにいて日中の価格の動きやその他のボラティリティにかかわる動きを モニターしています。また彼らは相場を動かす天候の変化や政治的混乱などもその考慮に入れるとしており、彼らの判断がマージンの上げ下げを決めています。 マージンの改定は発表一日後に施行が通常です。投資家からはマージン決定のうえでのプロセスの可視化を望む声が強くなっていますが、取引所に言わせると、 もしそういったプロセスの詳細をオープンにすれば今度はそのシステムを利用して、一儲けしようというトレーダーがきっとでてくるであろうとの心配をもって います。しかし、今回のような極端な連続マージン上げの結果、明らかに相場の動きに大きな影響を与えています。それだけで相場が急落したと言っても過言で はありません。取引所はこれまで以上にマージンの変更には注意をはらう必要が出てくるでしょう。またマーケット参加者からのマージンを動かす上でのプロセ スの明確化の要望もどんどん強くなってくるでしょう。もはやマージンは些細なこと(marginal)なことではないのだから。
以上
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貴金属ディーリングの世界でも第一人者である池水氏は、上智大学を卒業後、住友商事、クレディ・スイス、三井物産、スタンダードバンクと貴金属ディーリングに一貫して従事し、現在はスタンダードバンク東京支店長。Oval Next Corp.サイトで市場分析ブルース(池水氏のディーラー名)レポートも掲載。









