年初金価格の急落と実需の動きが示す今後の金相場の行方 - 12 January 2011

スタンダードバンク東京支店の池水雄一氏が、「池水雄一のゴールドディーリングのすべて2」で、年初の金価格の動きを実需と絡めて解説し、今後の金相場を予測しています。
年初の金価格急落の背景

先週見たとおり、2010年の最後は、ほぼ一年の最高値圏での終わりとなりました。ゴールドも1420ドルまで上昇して一年が終了。しかし、1月4日東京とロンドンが戻ってきてようやく全プレーヤーがマーケットに揃うと、一斉に売りが出てきました。この日の東京は1415ドル前後での推移でしたが、ロン ドンに入ると売りが膨らみ一挙に1410ドルを割り込み、ニューヨークのオープンと同時にファンドからの大量の売りが膨らみ、ストップの売りも引っ掛ける ように、上のチャートで見れるように一挙に1380ドル割れまで急落しました。インデックスファンドなどが年初にそのポートフォリオの見直しに動いたというのが直接のきっかけのようです。昨年の金価格の急騰により、本来ポートフォリオにおける金の割合が意図したものよりも大きくなってしまい、その「リバランス」、つまり、予定を越えた部分を売却して割合が減った資産を購入した、と言うのが実際のところのようです。そもそもマーケットは圧倒的にロングであ り、この急落過程で、損切りさせられたロング筋もおそらく相当いたものと思われます。その後8日金曜日の雇用統計の直前には1350ドル台まで下落しましたが、雇用統計(非農業部門雇用者数変化)が予想の15万人増に対して9万人台と大幅に悪い数字であったことにより、一瞬にして1370ドル台まで値を戻しました。またその後はまた南欧の国債が売られて利回りが急騰するようなこともあり、金はこれ以上は下がりにくい展開になっています。

急落で動き出すアジアの実需

この年初一週目の急落の場面で、年末にかけてまったく見られなかった実需の買いが急速に盛り上がっています。実際1月4日の急落のときから、アジアを中心とする実需は積極的に買いを入れており、この週のうちに現物(流通の中心であるキロバーを筆頭に普段はアジアでは必要とされないラージバーまで)の流通在庫がほぼ払拭。連休明けの今週は市場にキロバーがまったくない状態になっています。東南アジア、香港・中国からの引き合いは非常に強いのですが、いかんせん、売るべき現物がない状態。香港ではキロバーのプレミアムが3ドルにまで達しているとの情報もあります。普段はせいぜい数十セントのものが、です。しかしいくらプレミアムをあげてもないものはない、という状況が続いています。あれほど売りがあった日本も今年に入ってからはほとんど売りはなくなりまし た。といっても決して買っているわけではありません。とにかく価格が下がって売るのをやめた、というところでしょうか。 これだけの買いがあるにもかかわらず金価格は1375ドル近辺。ファンドの売りがまだ終わりきっていない証拠といえるでしょう。しかし彼らが売るのは主に先物。いくら彼らが先物を売っても現物市場の需要不足は解決されません。逆に彼らが先物を売れば売るほど(価格が下がれば下がるほど)、実需の買いは強 くなるという反比例の関係にあるわけで、現在の1370ドル台以下のレベルは実需は決定的な買いのレベルと見ていることは明らかです。この状況を考えるとおそらくはこのあたりが相場の底となり、ファンドの売りが切れたときにはまた上昇の動きが始まるのであろうと思われます。ただし、1400ドル超えでは今回しこたま買い込んでいる実需投機家筋からの利食いの売りが入ると思われます。短期的には1350-1400ドルでのレンジ取り引き、そして欧州問題などの要因でまたファンドが買いに回るときがくれば、今度は歴史的高値の更新をめざす動きが予想されます。よってこのあたりは実需にしたがって仕込みどころ。 短期的勝負であれば1400ドル利食いが狙えるでしょう。しかし、バーナンキ米連邦準備理事会議長が、その議会証言で「(経済が)通常に戻るには4-5年かかる。」と言っているように、米国は金融緩和をまだまだ続けざるを得ないでしょう。これを考えると短期的勝負というよりは長期的なゲインをまだまだ狙えるのではないでしょうか。

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池水雄一, 12 Jan '11
池水雄一さんのユーザアバター

貴金属ディーリングの世界でも第一人者である池水氏は、上智大学を卒業後、住友商事、クレディ・スイス、三井物産、スタンダードバンクと貴金属ディーリングに一貫して従事し、現在はスタンダードバンク東京支店長。Oval Next Corp.サイトで市場分析ブルース(池水氏のディーラー名)レポートも掲載。