日本から学ぶ金価格とデフレの関係について - 4 November 2010
「インフレーションヘッジ」とみなされている金が、現代の典型的なデフレーション時に、どのようにその価値を3倍にしたのでしょうか。BullionVault日本サイトを運営するホワイトハウス佐藤敦子のリサーチを基に、BullionVaultリサーチ主任エィドリアン・アッシュは、日本の過去20年間におけるデフレ時の金相場を分析し、思考実験を行っています。
まず、中央銀行は正しいと仮定してみましょう。
そして、日本において20年間のデフレが終焉を迎えているのに対し、西欧では衣服の価格が下がりつつあるとします。
中央銀行の外貨準備高が2005年以来倍増し、1970年半ば以来最も最低である実質ゼロレート以下であることは、エネルギーおよび食品価格への影響はないと仮定しましょう。
さらに、2007年のクレジットクランチ(信用危機)以来の全ての経験に反して、「産出量ギャップ(Output Gap)」理論、またFRBが水曜日に示唆した「低水準の資源利用」が、最終的に正しいものであり、余剰資金と低迷する需要によって、価格が引き下げられるとします。
短期的に、通貨の価値が上がることを想像してみてください。それでは、その場合どのようなことが起こるのでしょうか。
日本の消費者物価が下がり始めた3年後、また日本銀行が金融の量的緩和を行った1年後である2002年において、経済産業省は「デフレに関するアンケート調査」をまとめました。
この調査において、 8割弱(77.2%)は強弱の差はあってもデフレを実感し、25%は強く感じているのに対し、デフレを全く感じていないのは、回答者の1%未満にとどまっています。
しかしながら、東京工業品取引所における金先物の価格、また銀座の小売業の金価格においては37%上昇しています。つまりは、この時点で金を購入した人々へは、究極の「インフレーションヘッジ」と言われている金は、実質40%以上のリターンを生み出したことになります。
確かに、世界における金価格は上昇していました。そして、日本のデフレーションは円が為替市場で価値を失い始めた時に起こったために、日本の金購入者にとっては、ドル建て価格を16%上げることとなりました。しかし、2009年までの長い緩やかなデフレーションにおいて、日本は世界第2位の経済大国で、世界第二の規模の株式市場を保有していました。1998年にピークを迎えた消費者物価以降、公的支出の増大によって、世界第二の国債市場規模から、その市場は第一位へと拡大しています。
日本のこの経験を特殊なものと扱うべきではありません。経済における実際の通貨供給量ではなくとも、国内のリスク資産価格と信用供給において、デフレーションは影響を与えました。米国と英国においては、金融の量的緩和により、ベースマネーが増大し、銀行の貸借対照表に資金が留まったがために、記録的な公的赤字を増加させていません。消費者物価が緩やかに下降しているために、国債の価格が上昇し、その利回りが実質利回りである間、日経平均株価は4分の1以上の価値を失いました。不動産においては、すでに全国的に過去10年間に5分の1の価値を失いました。
第二次世界大戦後、唯一主要国の中で、デフレーションを経験した日本は、現代のデフレーションがどのようなものかという一例を示しているはずです。また、BullionVaultが取りまとめた、下記に示す1988年以来の日本の投資環境の概要を見ると、米国と英国の投資家は、その環境が驚くほどに自国の経済環境と類似していることに気がつくでしょう。
- 預金のリターンはゼロ。-ゼロレートは10年前に日本銀行が先駆的に行ったものでした。
- 株式市場に値ごろ感がないこと。-S&Pはそのピークであった2000年の株価収益率45に比べると低いかもしれません。しかし、いまだにその値は20です。日本の株式市場では、昨今この率が15で取引が行われています。これは、歴史的には低いものでしょう、しかし一桁には程遠いものです。
- 記録的な国債発行額。-日本が導き、米国がそれに倣い、英国もそれに続いている、記録的な額の国債を発行し、記録的に低い利回りで、リスクを伴わない投資先を望む年金や保険基金へ売却。
- 保守的な投資商品以外への投資-低い配当および金利によって、通常は保守的な投資家が、高い利回りの債券や開発途上国の通貨取引、貴金属取引といった、リスクの高い投資を行わざるを得なくなる状況。
「国内経済の先行き不透明感が、日本の金投資に拍車をかけています。」とワールドゴールドカウンシルの四半期ごとの「Gold Demand Trends(金需要傾向)」は2001年の終わりにレポートしています。金地金現物の一般投資家からの需要は、2002年に24%増加しました。これは、2003年にさらに増加し、2004年には26%の増加となっています。
日銀は2002年4月1日より預金保険法の保護の上限を、定期性預金にかぎり、1金融機関につき1預金者あたり元本1千万円とし、2005年4月には、利子のつく普通預金を含む定期性預金をその対象としました。ワールドゴールドカウンシルが日本を「56%の一般世帯の貯蓄が銀行預金で保管されている」、「銀行破綻が日常ではない国」と言及しているように、これは日本国民にとって大きな意味をなしたのです。デフレ下に保護がされていない銀行の破綻への憂慮から、2004年に金投資への需要がその重量においては42%急増したのでした。円評価額においては、1,030億円と2003年から50%近く増加しました。このように、4年間におよぶゼロレート政策は、日本の保守的な貯蓄者を他の投資へと向かわせたのです。
金利の低下と物価の穏やかな下落が起こっていた、日本のデフレーションの初期において、高い利回りを得ることができる、外国債券への投資によって、一般投資家や機関投資家が被った損失が多く報道されていました。この傾向は、その後も長期にわたり続きました。そして、東京外国為替市場の平均取引量は、日本銀行のデータによると、2003年から2006年の間に18%増加しています。しかし、一般投資家向け為替証拠品取引が東京金融取引所で始まるまでは、その傾向は顕著なものではありませんでした。
2005年7月に「クリック365」の取引が、東京金融取引所で始まりました。
出典元: INVAST SECURITIES CO.,LTD.
このように、金利がゼロレートとなった時、金地金のみが投資商品として選択されるのではありません。消費者物価が、過去10年間に大幅に下げていない中、米国の消費者のみならず、日本の消費者もまた政府発表の物価指数を必ずしも信頼することができないようです。
日本銀行によって取りまとめられた、全国の満20歳以上の個人4000人を対象に行われた生活意識に関するアンケート調査によると、2009年9月には人々は1年前と比べ物価が+3.6%となっていると感じています。その後、多少物価が下がったことを感じた後に、今年9月には+1.3%であると感じています。
これは、15年変動利付国債の利回り( 5年債利回りは0.3%)をほぼ相殺しています。つまりは、米国や英国の貯蓄者同様、実質利率がマイナスとなります。
このように預金に対するリターンがゼロに達すると、金の投資の上で下記の二つのことが起こります。
- 貯蓄をすることにより得られる金利収入が消え去ります。金は金利を生み出しません。しかし、預金も生み出していないのです。そのため、金を保有することによる機会費用が発生しません。
- 時間が経過すると共に、より多くの人々が、預金することにより実質資産価値を失っていることに気がつきます。1973年冬の公式米国インフレーション率は8.3%に対し、金利は6.7%となっています。もしくは、2010年夏の公式米国インフレーション率(日本銀行によるアンケートデータの過去12ヶ月の平均と同様)は、1.5%に対し、金利はゼロレートとなっています。この状況下では、同額の預金額で一年後に購入できるものは減少することになります。 そのため、代替投資先を探すこととなり、金の希少性、流動性のある市場は明かな選択肢の一つとなります。
ここで、先で行った思考実験を終えることとしましょう。この実験においては、インフレ率が上がり、実質金利がマイナスとなるという経済のサイクルを進むはずでした。しかし、デフレーションを恐れる米国連邦準備制度理事会による、6000億ドルの追加量的緩和により、世界資産や商品市場に資金があふれることとなると.....
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弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。









