東京に指標価格を! - 22 June 2011
スタンダードバンク東京支店長の池水雄一氏が「池水雄一のゴールドディーリングのすべて2」で、東京にも金の指標価格を持つべきという提言を行っています。
今週・来週はちょっとまじめに東京ゴールド市場発展のための提案です。このマーケットにお世話になって25年、こうあればよいのにという思いは数え上げればきりがありません。世界中のゴールドのマーケットがこれだけ盛り上がっているのにかかわらず、唯一、と言っていいでしょう、日本の市場だけが右肩下が り、凋落の一方なのは本当に悲しいものがあります。その中でも今日はまず一点。私が考える東京市場に欠落していて、もっとも不便なものをあげます。
それは「指標価格」です。皆さん、今日の円建ての金価格は、と聞かれたら、一体どういう価格を答えますか?個人投資家ならおそらく貴金属商の「小売価格」でしょうか。実際にゴールドを商売としているプロならば「山元建値」でしょうか。現在、日経新聞の商品欄に掲載されている金価格は以下の通りで す。(6月14日日経新聞朝刊より)
・小売価格(地金商系、消費税込み、円)買値4058 売値 4141
・山元建値(円)金(1グラム) 3940
少し解説しましょう。ロコ東京金というのは東京で取引されるゴールドキロバーのディーラー間取引の価格です。まさにマーケットの中心価格と言ってもよい でしょう。終値と書いてありますが、午後3時半時点での価格だと思います。昔(20年くらい前)はロコ東京金マーケットというディーラーマーケットが存在 して、活発に取引がなされてました。しかしそのマーケットはいろいろな理由から現在は存在しません。日経新聞記者がおそらくどこかの業者に電話して聞いて いるものでしょう。
小売価格は個人がもっとも身近に感じるところのものです。これは毎朝9時半に田中貴金属が決める価格に業界が基本的に右倣えをする価格です。これは税込みの小売と買取の価格があります。これは一般の人への価格ということで、当然ながら貴金属商の現物販売のコストがのっており、いわゆるインターバンクのマーケットに比べると売値は高く、買値は低くなっており、この売り買いの値差もほぼ80円ととても広いものになっています。
田中貴金属のweb site > http://gold.tanaka.co.jp/commodity/souba/
山元建値というのはあまり聞きなれない言葉かもしれません。これは昔から鉱山会社が金属をその顧客に売るときの売り卸価格として毎日発表したものです。 英語ではProducer Priceといい、まさに鉱山会社の価格といえます。現在でも毎朝10時半ごろ発表されています。金属の種類によってこの建値を出す鉱山会社決まっています。貴金属ではゴールドは住友金属鉱山、シルバーは三菱マテリアルが毎日発表しています。これもまた小売価格と同様に鉱山会社のコストが加味されており、 そのときの実際のマーケットよりグラムあたり20-30円近く高くなっています。
現在、日経新聞紙面上という形でまがりなりにも「誰もがみられるゴールドの価格」として公表されているのはこの三つになります。同じく公の価格として東工取のゴールド先物価格が考えられますが、これはまず先物取引の価格である、ということがほかの三つとは違います。また取引自体はざら場の取引となっているので指標性という意味ではマーケットオープンの板寄せでの価格ということになるでしょう。ザラバではずっと取引が続いており、どの時点をとって指標価格 というのかは非常に難しい問題であるからです。
この三つの円建ての金価格、日本の円建て金価格の指標とするのにはいずれも問題があります。私が考える指標価格の条件はまず、マーケットの総意に基づい た「公平な価格」であることです。残念ながら小売価格と山元建値はこの観点から指標価格と呼ぶのは難しい。ロコ・東京価格はどうか。これも現在マーケット として機能していない。20年前は東京で多くの市場参加者がお互いに価格を聞きあって取引が成立するロコ・東京ゴールド・マーケットがあったが、アジア危 機の際、各社の与信の問題から活発な取引は行われなくなり、現在はディーリングマーケットとしてのロコ東京ゴールドマーケットは存在しません。もしあった としても相対のマーケットの終値というのは、先物市場のザラバと同じく、一つの値段だけがみんなに見える形で存在するわけではありません。
1.マーケットの総意を体現したもの
2.世の中に広く発信し、誰もがその価格を認識できること
3.その価格で取引することが可能なこと
第1の点はマーケット中の売りたし、買いたしを集めることによって、その時点でのマーケットの総意を反映した価格になるということです。高すぎると売り たい人ばかりになり、安すぎると買いたい人ばかりになります。売り買いのバランスの取れるところがつまりその時点での価格となるわけです。第2点は言わず もがなですが、誰でもその価格がわかるということです。そして第3の点がもっとも大切なところです。ゴールドの取引に詳しい人はおそらくピンと来るはずだ と思います。上記三つの点を満たす世界のゴールドの指標価格があります。それがLondon Fixing、いわゆるロンドンのフィキシング(値決め)です。
(来週へ続く)
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貴金属ディーリングの世界でも第一人者である池水氏は、上智大学を卒業後、住友商事、クレディ・スイス、三井物産、スタンダードバンクと貴金属ディーリングに一貫して従事し、現在はスタンダードバンク東京支店長。Oval Next Corp.サイトで市場分析ブルース(池水氏のディーラー名)レポートも掲載。









