東京に指標価格を!(後編) - 7 July 2011
スタンダードバンク東京支店長の池水雄一氏が、「池水雄一のゴールドディーリングのすべて2」で2週に渡って行ってきた、先の提言の後編をお届けします。
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三週にわたって書いてきたこの話題、今回が最終回です。
現在、東京に指標価格となるべき価格が存在していないことを先週までに説明しました。ではなんらかの指標価格が必要な人々はどうやっているのでしょう か。ゴールド現物取引は圧倒的にスポットベース、つまりその瞬間瞬間でのマーケットの価格での取引をすることが多いのが実情ですが、中には昔からの長期契約もあります。その場合のベースになっている価格は山元建値が一般的で、この価格の月間平均からいくら引くか、という契約が多いです。
この契約には大きな問題があります。まず、前回説明したように、毎日の山元建値が取引不可能な価格であるということです。この価格で直接取引きできないということは、ヘッジができないということです。もしこの価格の計算根拠が明示されていれば、それにしたがってヘッジも可能でしょうが、もちろんそういうものは発表されていません。そのため、山元建値ベースの長期契約を持っている人々は、ある程度リスクをとって山元建値発表時間のスポットでヘッジをするしかありません。山元建値とスポット価格の関係が一定であればそれを考慮して契約が結べますが、それも決して一定ではなく、ある日はスポットと比してより割高であったり、またある日は割安であったりと常に一定ではないのです。
このリスクを誰もが負っているというのが現状なのです。それでも山元建値を使うのは、契約当時者が両方とも認識できる公開された価格が他にはないからです。少なくとも価格自体の大して疑義の生じる隙間はありません。たとえば毎日「午前10時のロコ・東京ゴールド価格」というような価格を使うと、ザラ場のマーケットでいくつもの価格がある可能性があります。お互いに認識した価格が違うと契約になりません。どちらかに有利不利がある価格になってしまうこともあるでしょう。
ここから先は僕の提案でもあり夢でもあります。東京に指標価格を作りましょう。ロンドンフィキシングの東京版を作るのです。誰でもアクセスできて、取引が可能、その時点でのマーケットの総意を集めるような値決めで、当然その価格は国内外に広く配信する。
東京のマーケットを構成する主なプレイヤー(その選び方からして困難が予想されますが、とりあえずここでは理想論だけにしておきます)、鉱山会社、地金 商、商社、リサイクル業者、外資系金融機関、商品取引員などから5-6社くらいのフィキシングメンバーを選び、メンバーは他のプレイヤーからのオーダーを 集めて、たとえば午前10時に一斉にロコ・東京・ゴールド・キロ・バーのせり(値決め)をします。売り買いのバランスが取れたとこで価格を決め、その日の 価格とし、公に発表します。キロバーという現物の価格にすることによってそのプレミアムやディスカウントで価格がゆがむのがよくないと思うのであれば、円建てグラムあたりのロコ・ロンドン・ゴールド・プライスでもよいかもしれません。そしてキロバーに交換するためのレート(location swap rate)は別途、相対取引者間での決定というのでもよいと思います。おそらくその方が、指標価格としての役割大きくなり、実際に現物に関係ない海外のプ レーヤーにとっても使いやすいものになるでしょう。月間平均などのヘッジも簡単に行われるようになります。
これを本当に行うにはさまざまな難題があります。でも決して不可能ではないと思います。ただ惜しむらくは、こういった努力を東京市場が非常に活発であっ た20年前から10年前くらいまでの間に行えなかったことです。現在はこういう考えがあったとしても、果たしてそれが本当に必要なほどの商売が東京市場に あるのかといわれれば難しいというのが正直なところです。
ただこういった一般の人にも目に見える形にした指標価格をつくり、それをベースとした商品を開発すれば、投資家にとっては大きなプラスではないでしょう か。まさに相場の中心にある価格を透明にすることにより、その価格をベースとしていろんな投資商品(たとえば純金積立やゴールド現物の販売など)の値決め をすると一部の投資家が抱える価格値決めにたいする不信感を大きくぬぐうことができるのではないでしょうか。
またアジア時間帯に日本が値決めを行うことによって価格情報発信地としての東京市場がアジアからも注目されるようになるのではと思います。海外でも同様のニーズがあるはずです。ロンドンフィキシングのアジア版があれば、将来的にアジアの人々がロンドンを待つ必要もより小さくなるでしょう。アジアのビジネ スはアジアの時間帯にアジアの中でおこなう。アジア全体として考えることができればより大きな動きになる可能性があります。
とまあ、これが日ごろ僕が抱えている夢です。夢を夢のまま終わらせたくはないですが、言うは易し、行うは難しです。まずは現在の日本の市場をよみがえらせること、これが先決問題ですね。
以上
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貴金属ディーリングの世界でも第一人者である池水氏は、上智大学を卒業後、住友商事、クレディ・スイス、三井物産、スタンダードバンクと貴金属ディーリングに一貫して従事し、現在はスタンダードバンク東京支店長。Oval Next Corp.サイトで市場分析ブルース(池水氏のディーラー名)レポートも掲載。









