盛り上がる個人のシルバー現物投資 - 8 June 2011

スタンダードバンク東京支店長の池水雄一氏が、世界各地のシルバー現物投資の現状を「池水雄一のゴールドディーリング2」で解説しています。

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今週は世界各地で盛り上がるシルバーの現物投資に関して書いてみましょう。

今世界的にシルバーの現物が個人に売れています。日本でも最近は地金商にシルバーを求めてくる人が少なくありません。シルバーのインゴットの世界標準は 30kg塊です。それを自家用車やトラックで積んで帰る人もいるようです。また1kgといった小さめのインゴットを販売する地金商にはそれを求めてくる個人も多いそうです。そして東工取では、買い玉を納会まで売らずに、全代金を払って現物を引き取る人も現れているようです。しかし、今シルバーの現物をもっ とも買っている国は、日本ではなく、アメリカと中国です。

中国

先週のレポートに書いたように、先週久しぶりに上海に行ってきました。現地でのゴールドに対する需要の急増はもちろんのことながら、より驚いたのはシルバーの需要でした。中国はシルバーの生産国です。ただし大きな銀鉱山があるわけではありません。日本や韓国と同じように、銅や亜鉛の鉱石を輸入し精錬する 過程でその副産物として出てくるシルバーを生産しているのです。中国は二年くらい前までは年間4000トン、多い年はほぼ5000トンものシルバーを輸出 するシルバー輸出大国でした。ところが昨年はその輸出量は約1000トンと激減。これは輸出優遇の税制が変更されたことも大きいのですが、その最大の理由 はやはり国内での需要が大きくなったことにあります。四大商業銀行の一角によると、彼らが2011年年初から4月末までに、個人の顧客に売った現物はゴールドが20トン、シルバーは30トンだそうです。ゴールドの20トンに比べると金額的にはまだまだ微々たるものですが、それでも数量的にゴールドを上回るだけの現物を中国の個人が買っているというのは非常に印象的です。過去こんなことはありえませんでした。

アメリカ

アメリカではシルバーはPoor Man’s Goldと呼ばれます。まさに貧乏人のゴールド。シルバーに対しては失礼な言葉ですが、この言葉どおり、ゴールドには手が出ない人がゴールドの変わりに投資するものとしてシルバーは位置づけられています。それだけにこの国ではシルバーへの投資家層は厚く、独特のシルバー選好があるようです。かって世界中の シルバーを買い占めようとして半ば成功していたハント兄弟は、テキサスの石油王でした。また近年ではあのウォーレン・バフェットも大量のシルバーを買って 市場の話題となりました。どうもアメリカ人はシルバーに対する思い入れがほかの国の人より強いようです。 2011年に入ってからシルバーマーケットは急騰し、ゴールデンウイーク前には一時50ドルちょうどまで上昇しました。もちろんこれはファンドを始めとする投資家の買いがその原動力でしたが、その資金が流入したのはiShare Silver Trustを代表とするシルバーのETFと先物市場のComexでありました。日本のゴールデンウィークにComexが一週間に三度にわたる証拠金の引き 上げを行い、これによりロング筋の利食い売りが一挙に爆発して48ドルから一時は32ドルまでの急落になったのが、5月前半のマーケットでした。

Silver ETFの残高推移

この急落によりSilver ETFの残高は急減しましたが(上記グラフ)、しかし現物は逆にこの値段の下げで大きく買われたのでした。5月のアメリカ・イーグルシルバーコインの売り 上げは113トンであり、4月の売り上げの30%増となりました。これは1986年以来の数字だということです。

ETFからの資金の流出が続く一方、このようにシルバーの現物は史上空前のペースで売れています。アメリカでは昨年から現物が不足しており、シルバーコインの生産も需要に追いつかず、一時販売を中止していたほどです。ゴールドとは違い、シルバーは輸出入には主に船を使うために、地理的な裁定が働きにくい。たとえば日本では現物があまっていても、簡単にそれをアメリカに持っていくこともできない。船で持っていくと何週間もかかり、その間に現物の現地での プレミアムもどうなるかわからないのでリスクが大きい。もちろん、飛行機を使っても採算があうような大きなプレミアムがつけば話は別であるが。 このような現物の書い手が存在している以上、シルバーの下値も限られてくると思われる。ゴールデンウイークの急落時の32ドルはおそらく大底。このとこ ろの相場をみていると34-35ドル近辺には非常に強い買いがある。いまだにETFの売りが続いており、その間は上値も38-39ドル近辺で重そうであるが、今日は触れなかったが、産業用需要もしっかりしており、この現物投資需要に支えられ、年後半は再び50ドルを目指すうごきになるのではないか。

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池水雄一, 08 Jun '11
池水雄一さんのユーザアバター

貴金属ディーリングの世界でも第一人者である池水氏は、上智大学を卒業後、住友商事、クレディ・スイス、三井物産、スタンダードバンクと貴金属ディーリングに一貫して従事し、現在はスタンダードバンク東京支店長。Oval Next Corp.サイトで市場分析ブルース(池水氏のディーラー名)レポートも掲載。