金だけじゃない!まだあがる貴金属、銀、プラチナ、パラジウム(後編) - 8 December 2010

先週に続き、スタンダードバンク東京支店長池水雄一氏が、プラチナ、パラジウムの市場を「池水雄一のゴールドディーリングのすべて2」で解説しています。
 
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「プラチナ」

プラチナは二つの要素を完全に押さえておけば、非常にわかりやすいメタルである、と私は常日頃から言っている。そのポイントの一つ目は供給サイド。その鉱山生産量の約8割が、南ア一国で掘り出されているために、このメタルは南アの状況が非常に大きなウェイトを占める。2008年には南アの電力不足のために鉱山の生産活動に支障をきたし、プラチナは一時2300ドル近くまで上昇したのはまだ記憶に新しい。南アの経済・政治情勢はそのままプラチナの生産に直結するのである。

そしてもう一つの重要な要素は自動車産業である。例年プラチナの需要の半分近くが自動車の排ガス触媒としての用途である。すなわち、自動車産業の動向が直接プラチナの需要に与える影響が非常に大きいということだ。同じく2008年から2009年。南アの電力不足による供給不安と新興国の自動車販売の好調から相場は2300ドルまで上昇したが、その後のリーマンショック、サブプライム問題により、アメリカ自動車メーカービッグ3の事実上の破綻が伝えられ、プラチナ相場は2300ドルから一挙に一時800ドルを割れるまで急落したのである。

南アの生産状況は現在でも万全とは言い難い。労使問題の頻発、そして採掘コストの上昇。現在、総合的なプラチナの採掘コストは1500ドルまで上昇していると計算しているアナリストもいる。当然のことながらこのコストを割ってしまうと、鉱山はプラチナを生産しても赤字になるので、生産が止まることになる。とすると必然的にマーケットは1500ドル以下にはなりえないことになるのだ。そして中国をはじめとする発展途上国のモータリゼーションの勢いは、日々増加のペースを速めているのだ。そしてそこには必ず触媒が使われるのである。

そしてもうひとつ、中国におけるプラチナの宝飾需要も見逃せない強気要因である。金選好の強かった中国が近年は若い世代を中心にプラチナにもその触手を伸ばしてきている。これら実需の買いは固く、その上にETFを初めとする新たな投資マネーが入ってきている。

やはり将来的におそらくもっとも上昇する可能性を秘めているのはPGMとくにプラチナであると思われる。ちなみにプラチナは地球上で一番重たいメタルである。二番目は金。比重でいうとプラチナは23、金は19である。人間は重たいものに価値を感じる。プラチナが金よりも価値があるのは一つにはこの重さがあるかもしれない。

「パラジウム」

2010年年初から一番上昇したのは金ではない。パラジウムだ。金は史上最高値といっても26%の上昇に過ぎないが、パラジウムは70%以上も上昇している。つまり年初に金を買った人よりもパラジウムを買った人のほうが3倍儲かったことになる。しかしパラジウムは一般に貴金属四品の中でももっともなじみの薄いメタルであろう。いわゆる白金族(PGM: Platinum Group Metals)と呼ばれるプラチナの仲間である。そのため用途はプラチナに近い。自動車の排ガス触媒が最大の需要分野で、プラチナがディーゼル車にメインに使われるのに対して、パラジウムは主にガソリン車に使われる。プラチナと同じく、全需要の半分以上が自動車触媒である。したがってこのメタルも自動車産業に非常に大きな影響を受ける。

2000年、パラジウムの史上最高値は1000ドルまで迫ったことがあった。これは日本の東京工業品取引所での当時の巨大なパラジウム先物の出来高に魅力を感じアメリカビッグ3の一角、フォード社が、取引所からの現物の調達を試みて起こったスクイーズ(玉締め)だった。値頃感からショートをしていた個人投資家の買い戻しで、市場が機能しなくなり、最終的には強制解け合いという非常事態を招いたことはまだ記憶に新しい。

プラチナとパラジウムの大きな違いはその供給サイドにある。プラチナは南ア一国が圧倒的であったが、パラジウムはロシアが最大の産出国であり、ロシア、南アがともに40%近くの生産国家であり、この二国で供給全体の8割以上をまかなう。パラジウムはロシアの輸出がどうなるか、が供給サイドの最大の焦点である。近年ロシアの備蓄は減少が激しいと言われ、その輸出方針も不安定となっており、それによって相場が動くこともしばしばである。

また2010年年初から米国においてプラチナとパラジウムのETFが始まり、投資家の資金が入り込みやすくなってきている。近年米国や中国ではパラジウムの宝飾品の人気も高い。銀・パラジウムの共通点と言ってもよいが、銀は「貧乏人の金」と呼ばれ、投資や宝飾の対象として金の代替品のような観点から見られてきた。そしてパラジウムも同じように「安価なプラチナ代替品」のイメージが強い。その観点から「割安感」も大きく、非常に高価になってしまった金やプラチナに変わって投資家の資金がこれら「割安組」に流れ込んできている。この流れはしばらく変わらないであろう。そしてそれが続く限り、上昇のパフォーマンス的には銀・パラジウムが、金やプラチナを上回るものになるであろう。

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池水雄一, 08 Dec '10
池水雄一さんのユーザアバター

貴金属ディーリングの世界でも第一人者である池水氏は、上智大学を卒業後、住友商事、クレディ・スイス、三井物産、スタンダードバンクと貴金属ディーリングに一貫して従事し、現在はスタンダードバンク東京支店長。Oval Next Corp.サイトで市場分析ブルース(池水氏のディーラー名)レポートも掲載。