金とインフレと金利の関係について - 23 June 2010

エコノミストは金について、どのように理解しているのでしょうか。BullionVaultのリサーチ主任Adrian Ashは次のように語っています。

なぜ金価格が、1970年代のインフレがない中、継続的に上昇し、最高値の記録を塗り替えているのでしょうか。

先週末のエコノミストの最新号の、Buttonwoodコラムは、この点に触れながらも、大事な点を見落としています。

「金を所有するというのは、伝統的には、インフレから資産を守るためでした。そして、インフレは、国債所有者にとっては、良いことではありません。 しかし、米国債10年物が利回り3.3%という、歴史的にも低いレベルである際、金と国債利回りは、逆相関関係にあるべきと考えることでしょう。しかし、1980年代に金が高値を記録している際、米国債10年物は、10.8%でした。固定金利商品に投資している人々は、1970年代に実質利益を得ることができませんでした。」

常に矛盾はありえるのです。エコノミストですらも、この矛盾を説明することができませんでした。

しかし、70年代に、インフレを理由として、人々は希少価値がある金を購入することはありませんでした。その理由は、実はインフレ率を上回る(もしくは下回る)富を蓄えるための競合商品である、貯蓄や債券の利回り率にあったのです。

そのため、金は1980年及び1990年代に、ドル通貨の投資家にとって、インフレのヘッジとしては使えませんでした。米国債10年物が消費者物価指数インフレ率を4.3%上回る利回りを支払っている場合、またフェデラル・ファンド金利がインフレを3%以上上回っている場合には、インフレをヘッジする必要はありません。まして、貯蓄がその価値を倍増している際に、金のドル建て価値が4分の3下落している時にです。

それでは、ドットコムバブルが弾けた際に連邦準備制度理事会が低金利で対応した頃からの過去の8年半を比較してみましょう。米国政府が発表した消費者物価におけるインフレ率は、それ以前の20年間の平均半分以下としています。しかし、債券と貯蓄に支払われている実質利回りは、下落しています。インフレを考慮に入れると、実際、フェデラル・ファンド金利は、過去101ヶ月の中で54ヶ月がゼロ以下となっています。そして、1970代にも、同様に54ヶ月がゼロ以下となっていました。

近年は、貯蓄者にとってはさらに悪い状況となっています。1970年代の54ヶ月は、1970年1月から10年間にわたって、広く分散しています。しかしながら、2002年以来の8年半の実質金利が、すでに先の10年間と同等レベルであるため、この10年間の平均値はさらに下がることでしょう。

1970年代は、フェデラル・ファンド金利は、インフレ率を0.01%上回っていました。2002年以降は、0.12%インフレ率を下回っています。

連邦準備制度理事会が現行の政策を変更しない限りは、2002年1月から2012年の間までに、さらに実質金利はマイナスを記録することでしょう。 そのために、下記のような状況が継続することとなります。

  1. 銀行貯蓄は価値を失うことでしょう。そのため、最も慎重な貯蓄者も他の選択肢を選ばざるを得なくなることでしょう。
  2. 金及び銀を所有する際の機会費用(貯蓄していることにより得られる金利)は、発生しません。

もちろん、金は、過去何十年も正式に貨幣としては使われていません。しかし、連邦準備制度理事会の政策金利方針は、金と銀は、富を保全する手段として、再度貨幣的価値を持ちつつあるのです。

リスクのない貯蓄が、その価値を失うことが保証されている場合、多くの人々は、いずれその資産を保全する場所を探すこととなるでしょう。それと同時に、金や銀を保有する際の地金保管費用が重荷でなくなった場合、新しい投資資金の流れが作られるでしょう。

貯蓄への実質利回りは、過去10年間において、低レベルもしくはマイナスとなっています。そのため、連邦準備制度理事会がインフレを上回る4%を得るレベルへ金利を上げない限りは、この資金が、歴史的に利用されてきた、資産保全の選択肢の一つである金から移動することはないかもしれません。

金購入については、こちらをご覧ください。

Adrian Ash, 23 Jun '10
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エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチ主任として、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。