金市場のトレンドを読む-2011年春 - 3 March 2011
初心者にも分りやすい金のブログとして、ワールドゴールドカウンシル日韓地域代表豊島逸夫氏にも推薦されている、「はじめての金読本」において、2011年春における今後の金市場のトレンドを解説しています。
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民主化という名の津波が中東産油国リビアを飲み込み、原油価格が上昇傾向にある一方で、欧米の景気回復期待が萎んで株価が下落しています。
さて、先日、ワールドゴールドカウンシル英国本社から、2010年通年の金需給データが発表されました。そこで今回は、その需給データなども参考にしながら、現在のトレンドの注目ポイントをお話ししましょう。
1. 供給は微増の状態が続いています
金価格上昇を背景に休眠鉱山の再開や新規投資の効果が出て、一次供給源とよばれる鉱山生産は2660トンへ微増。二次供給源といわれるリサイクル(宝飾などの売戻し)は価格上昇を受けてここ数年増加傾向にありましたが、昨年については若干減少して、1650トンの水準で頭打ち。さらなる高値への期待が高まっているためでしょう。供給に関しては、なんらサプライズはありません。
2. 中央銀行が需要サイドに回りました
東西が融合した1990年以降、ドルの独り勝ちが進むなか、欧州の多くの中央銀行が保有金の売却に動いていました。英国が売り、スイスが売り、フランスが、ベルギーが、さらにはオランダが、ポルトガルが売っていました。中央銀行といえば、過去20年間「売り」の代名詞でした。しかしリーマンショックをきっかけに、売却の動きは沈静化。反対に、ドル離れの観点から、ロシア、インド、中国、サウジアラビアなど、金を大量購入する国が出てきました。そしてついに、昨年2010年には、中央銀行全体でトータル90トンほどの買い越しに転じました。中央銀行が供給サイドから需要サイドに回ったことは重要で、買い方に安心感を与える材料になりつつあります。
3. インドと中国が下値を支える構造に
もともと世界最大の金需要国として知られていたインドも、 リーマンショック後の経済不況で需要が減退していました。しかし、昨年は経済の復調を背景にすっかり回復し、投資需要217トン、宝飾需要746トン、合計963トンを記録。一方、金取引のインフラ整備が着々と進む中国も、投資が180トン、宝飾が400トン、合計580トンでした。投資と宝飾を加えた世界の民間需要は3393トンですから、この両国だけで半分近くを占めたことになります。インドと中国の需要が下値を支えることになるでしょう。
4. 世界的にインフレ懸念が広がっています
異常気象や疫病を背景に食料品などの物価が上昇しています。しかし食料価格高騰の底流には、新興国、途上国の人口増加、経済発展がありますから持続性が高いと思われます。さらに、先進諸国の過剰な金融緩和でマネーがだぶつき、資産バブル、資源バブル懸念が持ち上がっているところに、民主化要求デモが、北アフリカ・中東という大油田地帯を飲み込みつつあることが、インフレ懸念に油を注いでいます。
5. 新しい市場が誕生しつつある気配です
先月、米国の大手銀行JPモルガン・チェースが、金を金融取引の担保として受け入れることを発表しました。すでに、英国でも追随する動きが出ているようです。これは、金現物または金ETFを保有しているファンドが、仮にキャッシュでドルやユーロが必要になった際に、保有金を売却することなく借入れができるということです。つまり、通貨としての金の役割を強化する動きであり、金市場で、いま、とても注目されているトピックです。この「金の担保市場」とでもいうべき市場が成長すると、金はますます売られにくくなるでしょう。
6. 価格形成の主導権は先物から実需へ
金価格形成にもっとも大きな影響力を持つ市場といえば、これまでCOMEX(ニューヨーク金先物市場)でした。実際、2~3年前まで、COMEXを舞台にファンドが利益確定に動き、買越残高が短期に100トン減少すると、金価格が100ドル下落するほどの影響力がありました。ところがインド、中国を中心にアジアの需要が拡大した現在、100トン減少しても50ドル下がるかどうかという状況です。COMEXの影響力は少しずつ低下しつつあるように見えます。いまや金の価格形成力の主導権は、先物から実需へ移動しつつあるといっても過言ではないでしょう。
7. 今後のリスク要因は
最後に今後のリスク要因をお話ししておきます。インフレ懸念が新興国から欧州に伝染しつつあります。金はインフレに対する保険という役割を持っていますが、金利が急騰してくると、売られやすくなるので要注意です。もうひとつは、北アフリカ・中東で津波となっている民主化運動が、東アジアに波及した場合にも要注意です。とくに中国に波及して現政権が揺らいだ際には、世界第二位の需要大国だけに大きなリスク要因となります。
金読本では何度もお話ししてきましたが、金市場はここ数年で大きな変貌と遂げつつあります。あまり足元の値動きに一喜一憂することなくどっしり構えて金と付き合っていきたいものです。
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経済アナリスト、そして金市場の第一人者の豊島逸夫氏にも推薦されている金のブログ「はじめての金読本」より。








