1月の急落金相場と実需の動き - 17 February 2011

スタンダードバンク東京支店長の池水雄一氏が、「ゴールドディーリングのすべて2」で今年初めの金価格の急落の背景と実需の動きを解説しています。

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今週は年明けからこれまでの金相場の動きを詳しく書きたいと思います。昨年年末の金相場はほぼ一年の高値で終わりました。(1420ドル)

そして年明けの1月4日に欧米で急落。ゴールドは一挙に1370ドル台まで大きく下がり、1月の波乱を予感させる幕開けとなりましたが、まさにその予感 は正しかったと言えるでしょう。結局1月は1415ドルで始まり、安値は1310ドル(ほぼ100ドル下がった!)、高値は始まりの1415ドル、そして 月末値は1327ドルでした。



1.急落の背景

さて、この急落の原因は何だったのでしょうか。何を書いてもMonday Morning Quarterbackになってしまいますが、ま、それは仕方ないとして読んでもらいましょう。まずこの売りのきっかけになったのは、インデックスファン ドのポートフォリオのリバランシングだと言われています。年初にファンドがそのポートフォリオの見直しにするのですが、ゴールドは一年前に比べて20%強 価格が上昇しました。つまり、ポートフォリオの中でそもそも設定したゴールドの占める割合が二割上昇してしまっているということになり、もし当初のポート フォリオを守るとすれば、増えた部分は売って、減った部分は買って、そのバランスを保たなければなりません。これがリバランシングです。この動きがイン デックスファンドや、米系大手証券の自己取引部門からも大量に出たことをきっかけに急落となりました。そもそも歴史的高値圏にあったこともあり、1400 ドルを割ったレベルでは損失拡大を防ぐためのロング筋のストップ売りオーダーが多くおいてあり、それらが雪ダルマ式に発動され、4日の40ドルに近い急落 という動きになったのでした。これ以降、ロングのファンド筋の売りは日々強くなっていきます。Comexのロング残高、そしてGold ETFの残高も日に日に減少していく動きになりました。一月の動きの一面を一言でいうと「ファンドの売り」です。ロングの利食いもしくは損切りの売り。そ して後半には、より大きな下落を期待した向きによるショートの売りも相当見られるようになりました。Comexの投資家ロングは年末には900トン超あっ たものが、1月末には700トンを割り込みここだけで200トン近い売りが出たことになります。但し、後ほど明らかになったところによると、SHK Asset Managementというヘッジファンドが、ComexのGold 建て玉の10%も手仕舞い売りしたということで、この一社がマーケットを大きく動かしたと言っても過言ではありません。またETFも一ヶ月を通して60ト ン、その残高を減らしました。そもそも長期投資家が多い商品ですが、最近は短期的なマネーも流入しており、1月に減少した部分はそれに当たると思われま す。



2.実需の動き

価格が1400ドルを越えていた年末はまったく実需の買いが存在せず、逆にスクラップの売りが実需の主な動きでした。我々のようなトレーダーは、年末の 在庫を持たないように、現物の処理に四苦八苦していたのです。ところが、年初の急落でこれが一転。買いのチャンスを待っていた実需筋は、1月4日の急落時 から非常に大きな買いを入れてきます。一週目にして市場にあったキロバー現物はすべて掃けて、すぐに現物不足の状態に陥りました。買いの中心は中国、そし て東南アジア。ちょうど旧正月前の需要期にも重なり、またマーケット全体の先高感も写して、この下げは買いという見方が実需筋には強かったようです。とに かく買い買い買い。しかし、上でみたようにファンドの先物およびETFの売りはざっと260トンを超えるもの。実需の現物買いは当然のことながらレバレッ ジのかかった先物売りの勢いとは比べ物になりません。実需が買って、現物不足に陥っているのにも関わらず、価格は下がっていくという、一見矛盾した状況が 続いたのです。現物不足は、現物のロコ・ロンドン価格に対するプレミアムが大きく上昇するということで、この状況は目に見える形で現れました。年末にはほ とんどプレミアムがない状態であった需要地(東南アジアや中国など)での現物は、価格急落後、大きく上昇。一時は3ドルや5ドルとまで言われました。これ はプレミアムをいくら払ってでもこのレベルでは現物が買いたいという実需筋(もちろん現物投資家も含みます。)が多かったということです。昨年一年間の平 均のプレミアムはおそらく0.4-0.5ドルであったことを考えるとこの1月はそれが大きく跳ね上がったということになります。日本は一貫してゴールドは (投資家の)売りの国ですが、1月は価格急落の影響もあってほとんど売りらしい売りがありませんでした。需要国が買いに走り、供給サイドである日本のよう な国が売らなくなったことで、現物の不足はより深刻なものになったのです。



3.底値の確認と2月の上昇

1月の安値は1310ドル近辺、28日のアジアで付けたプライスです。テクニカル的には200日移動平均線が1270-1280ドルレベルにあり、おそ らく大底はこのあたりまで行く可能性もあると見られていましたが、結局この1310ドル割れというのが今回の最安値になりました。同じ28日の欧米では緊 迫化するエジプト情勢を受けて、週末金曜日であることもあいまって、大きなショートカバーが出て、この週の引けは1340ドルと低値から30ドルを一挙に 戻しました。実需は月初から月末までとにかく買い続けました。精錬から新しいキロバーが出てくるたびに、飛ぶように売れて行きました。ここ数年これだけの 現物需要はみたことがないくらいのレベルでした。これだけ買われるとさすがに相場にも強い影響があります。ファンドの手が収まると必ず、実需がやっていた 方向に相場は動くというのが、私が確認してきた法則です。今回はファンドの先物の売りも実需の現物の買いもそのボリュームが半端ではなかった分、時間もか かったような気がしますが、やはり今回も実需の買いがマーケットを支える結果となりました。2月半ばゴールドは1360ドルまで戻しています。今後短期的 には1370ドル近辺のテクニカルな抵抗線を抜けると1390ドル台まで上昇する可能性が高いです。1370ドル近辺にはそういったストップの買いが散見 されます。しかし今回の下げでの実需の買いがあまりにも大量であったがために、1400ドルに近づくと逆の今度はその利食い売りが相場の頭を押さえる役割 を果たしそうです。 以上

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池水雄一, 17 Feb '11
池水雄一さんのユーザアバター

貴金属ディーリングの世界でも第一人者である池水氏は、上智大学を卒業後、住友商事、クレディ・スイス、三井物産、スタンダードバンクと貴金属ディーリングに一貫して従事し、現在はスタンダードバンク東京支店長。Oval Next Corp.サイトで市場分析ブルース(池水氏のディーラー名)レポートも掲載。