2010年の貴金属相場の回顧 - 22 December 2010

スダンダードバンク東京支店長の池水雄一氏が、「池水雄一のゴールドディーリングのすべて2」で今年の貴金属相場を振り返り、それぞれの市場を解説しています。

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今年も早くもあと一週間あまりとなりました。本稿「Gold Dealing のすべて2」も今年は今週が最後の更新になります。今年も読んでくれてありがとうございました。この連載を始めたのがおそらく2007年。もうまる3年以 上過ぎたことになります。今年は10月にこの連載を元にした「The Gold - ゴールドのすべて」(エイチスクエア社)という本を出版することができました。これも読んでくれる皆様がいるおかげだと思っています。本当にありがとうご ざいました。また来年もよろしくお願いいたします。皆さんにとってもすばらしい年になりますように。

さて、今年最後にこの一年を振り返ってみたいと思います。

上の表は今年の1月4日から、この原稿を書いている12月20日時点での相場の変化です。すべてのメタルが今年は値を上げました。しかしその中でも大きな 差がついています。どうしてもゴールドばかりが注目を浴びがちですが、実はもっともパフォーマンスのよかったのはパラジウムと銀でした。1月4日に買って おけば、パラジウムは86%、シルバーは83%も上昇したのです。ゴールドは同じ期間25%、プラチナに至っては17%の上昇に過ぎなかったのです。まさ に「人の行く裏に道あり花の山」ですね。

2010年はまた歴史的高値の更新が続く一年でした。1100ドルで始まり、低値は1052ドル(2月5日)、高値は1426ドル(12月7日、いずれもAM Fixing ベース)でした。ゴールドの最大の上げ要因となったのは、外部環境であるといえるでしょう。

・サブプライムから続くドルの価値の長期低落傾向。
・ヨーロッパ諸国の財政問題からのユーロの下落。
・世界中で景気の下支えのための市場への資金供給が生み出した過剰流動性と低金利。

そして上記の外部要因を背景として、ゴールドの内部要因的には以下があげられます。

・新興国の外貨準備のドル偏重からの、ゴールドへの資産乗り換えの動き。(中央銀行が 史上初めてネット買い手に。)
・上昇相場の中でも実需の高値慣れによる需要。
・中国の金需要の急拡大。国内生産350トンと年間輸入量250トン。年間総需要は600トン。一挙に昨年の7倍近くに。

これらの傾向はおそらく来年も続くでしょう。米国FRBの金融緩和姿勢が引き締めもしくは中立になったときに初めて商品への資金流入にストップがかかり、ゴールドも売られる可能性が高いですが、しかし、おそらくは2011年中にはまだそこまでの状況にはならないのではないかと思われます。逆にQE3の話も出ており、まだ金融緩和は続きそうというのが大方の見方。そう考えると高値圏での上下動はあるでしょうか、少なくとも基本的には強いマーケットが続くと考えてよいのではと思います。

Silver

シルバーはゴールドよりもはるかに大きく上昇した一年でした。デジタルカメラの登場により、銀塩フィルムの需要が激減し、それにより、もうシルバーは終わったと考えられていたのが嘘のように、どんどん新しい工業用途が生まれてきています。そもそも化学的特質はゴールドに負けず劣らずの部分がある一方、価格は1/60であるわけで、絶対的コストからシルバーの用途は大きく増加し、その需要が相場を支えていました。たとえば現在世界中で広がっている太陽光発電のパネルなどその端的な例です。この実需の存在に加え、米国を中心とした投資家の銀選好があります。ウォーレン・バフェット、ジム・ロジャーズ、ビル・ゲイツなど著名な投資家の名前がシルバーマーケットで取沙汰されることが少なくありません。実需に重ねてゴールドのように投資のマネーも流入している、どうしても投資家先行になりがちなゴールドよりもより、しっかりしている気がします。

Platinum

プラチナはご存知のように世界の8割を占める南アの生産と、需要の半分を占める自動車産業がその相場の行方のほとんど決めているといっていいでしょう。 南アの鉱山生産のコストは1500ドルと言われており、これを割り込むと生産は止まると考えるとおそらく現在の相場の下限はこのあたりにあると考えられ、 天井である1800ドルとの間での理論どおりのレンジとなりました。自動車産業の行方と南ア次第ではありますが、底値は固く、可能性として上値1800ドルを目指す展開を期待します。

Palladium

今年もっとも上昇したのがパラジウムでした。プラチナが南ア一国の生産が八割でしたが、パラジウムはロシアと南アが約4割づつ生産しています。ロシアの国家の在庫が底をつき、世界最大の生産者であるノリリスク・ニッケルもほぼ在庫ゼロ状態で、ほぼ自転車操業になっています。パラジウムは主にガソリン車の排ガス触媒に使われるため、中国やインドといった新興国での自動車需要が大きな強材料となっていいます。また需給のタイト感の上に、ETFによる投資家の資金も流入しているのです。シルバーとパラジウムに相通じて言えることは、絶対的レベルとして割高感を感じるゴールド、プラチナに比べて割安感が強いということ。そのため今後もパラジウム、シルバーはゴールド、プラチナよりも上昇期待度合いが強いと思います。

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池水雄一, 22 Dec '10
池水雄一さんのユーザアバター

貴金属ディーリングの世界でも第一人者である池水氏は、上智大学を卒業後、住友商事、クレディ・スイス、三井物産、スタンダードバンクと貴金属ディーリングに一貫して従事し、現在はスタンダードバンク東京支店長。Oval Next Corp.サイトで市場分析ブルース(池水氏のディーラー名)レポートも掲載。