2011年の金投資の環境について - 22 December 2010

2010年は、金の強気市場に多少の変化があったようです。BullionVaultのリサーチ主任エィドリアン・アッシュは、2010年を振り返り、2011年の金投資環境を解説しています。

それは、金融危機からの短期の需要ではなく、安定した投資需要の伸びです。これは、欧米諸国の財政難の規模が明らかになり、その懸念が一般投資家に広がったためでした。

多くの人々は、金地金投資は、インフレーションをヘッジする目的でされるものと考えています。これは、正しいことなのですが、金の強気市場か10年間継続した今、この古くから利用されてきた目的で、あらためて金投資が行われています。金融危機の後、信用リスクのない金が、貯蓄に変わるものとして、資金の逃避先として利用されていました。そして現在は、ソブリンリスクを懸念する規模の財政危機、および通貨安戦争から逃れるためというように、古来の目的で金は利用されることとなっているのです。

2011年の金投資の需要に影響を持つ、4つの要因を下記に示します。

1. リスクがない投資においては、損失が保証されているという点

貯蓄によるリターンが、インフレ率を下回った際、金が金利を支払わないという事実は、投資条件を考慮する際、重要ではなくなります。金は、その産出量に限りがあり、決して人工的に作り出されないために、通貨の代替物としての特色を持ち合わせています。2011年においては、インフレ率の上昇が予想されています。しかし、イングランド銀行と米中央銀行である連邦準備制度理事会が、政策金利を2011年に上げることが考えられず、十分な実質利回りがが得られない現状では、貯蓄者が預金へと戻ることはないでしょう。

2. ユーロ諸国に政治的なリスクがあるという点

欧州とそのユーロ圏の財政危機が金投資への需要を作り出しています。インフレ率の上昇や国家の財政破綻やユーロ圏解体への懸念が、特にドイツにおいて高くなりつつあります。これらは、また中央銀行首脳にとっても頭の痛いものです。彼らは、過去10年間、外貨準備に多様性を持たせるために、米国ドルの比率を下げようとしていた中、通貨供給量のインフレにより、米国通貨に政治的リスクが加わったことに気づいたのです。

3. 世界でも最も速いペースで金の最大購入国となりつつある中国

2009年初頭に発表された金備蓄量が60%増加した後、多くのアナリストは、中国人民銀行がいつ急激な備蓄量の伸びを発表するかに注目していました。しかし、世界でも最も早いペースで成長している経済を持つ中国からの金関連のニュースは、一般市民による金の需要の伸びでした。それによると、中国の消費者は、過去2年半の間に、中国人民銀行が保有する金備蓄量以上の金を購入したというものでした。

預金金利が、中国政府に発表されているインフレ率の半分にも満たない場合(インフレ率5.1%に対し、預金金利2.25%)、インフレに強いとされる金への需要は、2005年以来、重量においては年々14%、評価額においては、年平均38%の増加となります。中国政府は、国外からの投機資金が流入することを避けるために政策金利を引き上げることはできる限り避けようとすることでしょう。その結果、すでに過去28ヶ月で最も高いインフレ率が、今後も自国貯蓄者の資産を目減りさせ続けることとなるのです。

4. 供給について

金鉱会社が上昇する金価格に対応し、産出量を増産するのに8年間かけ、その間ドル建て価格が3倍になった2009年に、拡張された産出量は6.4%にすぎませんでした。しかも、その採掘のために多くの費用を支出したにもかかわらず、その産出量は、1998年から2003年のピークにはおよばず、大きな金鉱の発見にも至らなかったのです。金融危機時には、リサイクルされた金が需要と供給の差を埋めていました。しかし、引き続き世界一の金購入者であるインドの消費者が高い金価格を受け入れ、その需要が安定して上昇する中、リサイクルをする金の所有者は、より高い売値を望みはじめているのです。また、欧米のリサイクル向け金の供給が底をつく中、かつて世界一の金産出国であった南アフリカは、すでに地下4キロの深さで金を採掘しているのです。

将来的に世界的な金の需要増加の大きな障害となると考えられるのは、実質金利の上昇です。しかし、欧米主要政府がその記録的な債務の財政上処理を行い続けるためには、金利は低く押さえざるを得ません。また、中国に代表される新興国が投機資金の流入を防ぐためには、金利を引き上げることは避けざるを得ません。そのために、2011年において貯蓄者は、その購買力を失うことが確実であり、資産保全のための一つの選択肢として、金への需要が継続して高まることが明らかだと考えるに至るのです。

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Adrian Ash, 22 Dec '10
Adrian Ashさんのユーザアバター
エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチ主任として、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。